ジブリ「君たちはどう生きるか」のあらすじと感想|天才は脳裏にカオスを抱えて生きている

ジブリ「君たちはどう生きるか」のあらすじと感想|天才は脳裏にカオスを抱えて生きている

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ジブリ映画「君たちはどう生きるか」とは

2023年7月のジブリ映画新作映画、「君たちはどう生きるか」が上映されました。
今回の作品は、予告なし・あらすじなし・パンフレットが公開後に販売される、などといった広告一切なしで上映された珍しい映画です。(SNSは公式のみ告知があり)

広告なしでいけるのは監督の宮崎駿さんの知名度があってこそできることだと思いますが、広告なしを決めたのはプロデューサーの鈴木さんらしいです。
ぶっちゃけ映画に限らず他の商材でも、作り手にとっては広告をうたなくてもファンが見てくれるっていうのは理想の状態だと思います。さすがジブリ映画。

前置きはこれくらいにしておいて、先日実際に見に行ってきたので今回はあらすじと感想を書き連ねたいと思います。




ジブリ映画「君たちはどう生きるか」のあらすじ

君たちはどう生きるか
公式Twitterより

舞台は戦後の日本です。(1945年くらい?)
一言で表すなら、片田舎にいた少年の不可思議な体験の物語になります。

始まりは主人公の真人(まさと)が家で寝ていると、外で空襲警報が鳴り、皆が外に出て避難と戦闘体制になった状況です。
この戦争で真人は生き残ったのですが、母親だけが亡くなってしまいました。

終戦後、真人の父親が再婚し工場を建て始めた関係で、義母と一緒にある田舎に引っ越すことになりました。

そこで真人は不思議な鳥と出会うのですが、そいつは「助けて、助けて」と人間の言葉を話すのです。
ある時、真人が転校先の学校でいじめられて寝込むことになるのですが、その時にまた不思議な鳥が「母親と会わせてやる」というようなことを言って、真人をどこに連れて行こうとします。
しかし義母に助けられて、真人は目が覚めます。

その後、なぜか義母が姿を消します。
義母が向かった先は、森の向こうの、大叔父が建てたと言われる建物です。

真人はキリトおばあちゃんと一緒に義母を探しにいくのですが、そこではあの鳥が現れ、不可思議なことが次々と起こります。

登場人物

※うろ覚えなのでご了承ください。パンフレット早くほしいな〜

真人(まさと):主人公。だいたい小中学生くらいだと思う。お母さんそっくりの意思強い顔
:工場の持ち主。商才ありそう。終戦後に再婚した。真人の父は姉妹を妻に持ったんか・・・声優はキムタク
夏子:義理の母。真人の母親の妹。妊娠している
ヒミ:真人の生母。夏子の姉。戦争で?焼けてなくなった。

おばあちゃん7人:真人の家に使えるおばあちゃんたち。キリトおばあちゃんは夏木マリだと思った

:館への案内人。真人の心臓を狙ってる




ジブリ映画「君たちはどう生きるか」の感想・考察(ネタバレあり)

君たちはどう生きるか

常人には想像もつかないほどのカオスっぷりでしたが、それでも面白いと思わせる映画でした。
今作の「君たちはどう生きるか」は、まさに宮崎駿の独壇場の作品でした。

一回見ただけでは噛むだけで一苦労、二回見てもやっと飲み込めるかどうかレベルだと思います。
それくらい衝撃を受けた作品でした。あと途中で見てて気持ち悪くなりました。鳥のシーンなど集合体恐怖症の方はおすすめしないです。

以下、センテンスごとに感想を語ります。

宮崎駿はこの映画で何を伝えたかったのか?

まとめるなら、タイトルどおり最後の大叔父と真人のやり取りが監督の問いなのかなと思います。

大叔父は真人に自分の建物の世界を引き継いで欲しいとお願いをするのですが、真人は自分の汚さ(悪さ)を分かった上で”自分はこの場所は合わない。だから元いた場所に帰る”という選択をします。

真人の汚さというのは、転校先の学生にいじめられた被害を大きくみせたことです。
やられてもいない傷を自分のこめかみにわざとつけて、出血させます。(出血の描写が血の量が異常でした。あれは演出なんでしょうか)

もしかしたら学校に行きたくなかっただけかもしれませんが、最後に自分は悪いと言ってるので、怪我についてはいじめた奴らへの報復みたいなものですね。
げんに父親が学校に金の力で解決しようとしたので、親の威光に甘えもあったのかもしれません。
家のごはんも美味しくないと言っていたし、まさに金持ちの坊ちゃんという典型的なタイプです。

その坊ちゃんが自分という自我を認識し、外の世界で生きていく選択をしたことが、真人の物語での結論だと思います。
もしかしたら、大叔父は宮崎駿さん自身とも読めるかもしれません。(こんな汚い現実に戻るのか、幻想のほうが楽しいじゃないかと言ってるのかも)

過去作・童話のオマージュてんこ盛り!

映画を見てて思ったのが、随所にいろんな作品のオマージュというか要素がてんこ盛りだったことが面白かったです。

例えば大叔父の部屋へ行く黄色の通路や、インコたちの巣などは”千と千尋の神隠し”と似ています。
夏子の産屋へ行く途中の大量の扉(3桁の数字)のシーンは、扉の上に円の中に4つの色が区切られていて、それが”ハウルの動く城”の扉に似ています。

しかもそれだけでなく海外の童話をオマージュされているシーンがあります。

例えば、真人が異世界に入ってキリトの家で寝ていた時、キリトと6人のおばあちゃんの人形に囲まれていました。
寝ている場所はキリトが座っている椅子のテーブルの下。
まさにそのシーンが”白雪姫の7人の小人”のシーンと似ていました。役割も似ているようですし。

また、火の姫と一緒に逃げているシーンでは彼女がメイド姿の格好をしており、インコ王国の建物の外がまるでイギリスの生垣みたいになっていたので、”不思議の国のアリス”と似ていました。

そんな感じでいろんなところにファンタジーの要素がたくさん入っていたので、結構不思議でした。
もしかしたら、あれは子供の世界だったのでしょうか。

むしろ子供の世界=宮崎駿の脳内を表しているのか・・・?
もし監督の脳内だったとすると、最後にあの世界は壊れるので宮崎駿の世界も終わった、という解釈もできます。

どちらにせよ、いろんな世界観が集まっていてカオスっぷりが半端なかったです。

夏子の感情とは

登場人物の中で、なかなか興味深かったのが真人の義母である夏子です。彼女はジブリ作品屈指の美人でした。
彼女は亡き姉の旦那と結婚して真人の弟を孕むのですが、妊娠したままあの異世界に飛び込んでしまいます。

異世界に飛び込んだ彼女は、子供を産むために産屋で寝ていました。
真人たちはその産屋にいくまで”石”に拒絶反応を受けながら、彼女に会いに行きます。

私が気になったのは二点です。
①真人が疲れてベッドで寝ていた時、夏子の表情は柔らかかったのに、真人から視線を外した瞬間非常に冷たく見えた。
②異世界で夏子と真人が再会した時、「あなたなんか大嫌い!」と言ったこと

女性が大嫌いというのは、相手に興味を持った上で自分の期待を裏切っている、という時に使う言葉だと思います。
とすると、真人が夏子の期待を裏切ったから拒絶しているんだと解釈できます。
これぶっちゃけ頭の中???って感じなんですが、考えられるのは真人の父親にいい感情を持っていない、ということかなあと思います。

とりあえず全体的な流れとしては最初は姉の子供である真人に複雑な感情を持っていたが、真人が自分のことを「夏子母さん!」と呼んだことで瓦解した、という感じだと思います。ただのその中身が未だ不明です。

またもう一つわからないのが、夏子のベッドの上に紙がつるされていて、それが真人に攻撃する際テープのような力を持っていたことです。
あの紙は何を表していたのでしょうか。
あとなぜあの場所で産もうとしたのでしょうか。夏子自身、子供は望んでいなかったのでしょうか。

ジブリ映画「君たちはどう生きるか」の謎

ここでは、見てもよくわからなかった謎をまとめます。

  • 案内の鳥男のくちばしは、なぜ穴が空いていると飛べないのか?
  • キリトのこめかみの傷は、なぜ真人と同じ位置にあったのか?→真人の投影した存在説
  • 殺生ができない人間はどういう存在なのか?
  • あの異世界は、過去も未来も混合された世界なのか?
  • 扉の数字の意味は?
  • 現実に戻った時、なぜ鳥たちはフンをしていたのか?→キャラクターの幸運説




まとめ

書きたいことはいっぱいあるのですが、とりあえずここまで・・・

うーーーーーん考えれば考えるほど、よくわからない映画でした。
ただ、最後に米津さんの「地球儀」という曲が流れた時、すごく綺麗な曲だったので”終わりよければ全てよし”という気持ちでいっぱいでした。(あんなに意味わからなかったのに!)

なんだか悔しいので、上映中はもう一度観に行こうと思います。
みなさんもぜひ観てみてください!